海を飛ぶ夢

新宿武蔵野館。意外にも初めて。新宿駅前にある。割引をしていないので、JOKERの隣にあるチケットショップで前売券を買って行く。予告編で映画以外の宣伝がこんなにあるのははじめて。ICI石井スポーツの昔っぷりに皆ウケてた。ハコも小さかかったけどスクリーンが見やすいのはよかった。あと、座席に傘立てがあった。今日のような日にはうれしい。今まで行った映画館にはあったかな。
と前置きが長くなったけど、この作品はアカデミー賞外国語映画賞をとった名作。当初はあんま興味なかったけど、各地の評判もよかったので観たくなりました。障害を持った男が「尊厳死」を決断してから実行するまでの話なんだけど、頬をひとすじ涙が流れてしまった。
似たような題材の映画に「みなさん、さようなら」がある。一番の違いは家族との関係。「みなさん、さようなら」は家族との関係が良好で最期も皆に囲まれて逝くのに対して、こちらは兄は明確に尊厳死に反対してるし、面倒をみてる義姉も複雑な感情を抱いてる。父も自分より早く息子が逝くのを不幸に思ってるし、甥は若さ故、主人公を厄介者に思ってる。そんななかでラモンは頑固にも死を主張しつづける。その姿はある種の傲慢にも映り、共感しずらさも感じる。しかしそれこそが彼と私の間の「決して近づけない永遠」であり、彼「だけ」の苦しみなのである。
最期の場所に連れ出したのは最も愛したフリアではなく、ロサだったというのが悲しい。しかも本当に最後の死を迎える瞬間には部屋には誰もいない。よくある都合よい話でない、この孤独感がさびしいなと思ってたら、エンドロールの最後でこの話が実話に基づくことを知る。
私がぐっと来たのは甥のシーン。車椅子を祖父と一緒に作るところでなぜかぐっときた。「しっかりやってよ」と祖父をしかる孫。いずれもラモンには複雑な感情を持ってる二人が、共同して彼のために作業をする姿に感動した。この甥はこれをきっかけにして自動車職人になるに違いない。そしてもちろん、ラモンが家族と別れるために乗った車の扉を閉めるシーン。義姉同様、もう観てられないですね。
みんなが苦しんでて悲しんでて切なかった。