歯ブラシ

また今日も実家を出て歩いているときに涙を流してしまった。
私は家族からとてもとても愛されている。
一人暮らしする前は、早く家を出たいって思ってたし、親にもそう言ってたし、親からもそうすればって言われてた。そうして社会人になって一人暮らしを始めた。
出てったら出てったらで変な意地があって、近いにも関わらずなかなか帰らなかったし、決して泊まろうとしなかった。それは私なりの一人立ちのための決別みたいなこと。
でも、そのせいか親からの言葉は優しくなった。ご飯食べてったらいい、泊まってったらいい、これ持って帰ったらいい、あれ買ってあげる。すごく心配してくれて、気にかけてくれる。
今回も高熱出したら布団かき集めて部屋あったかくしてくれて、ベッドの横に飲み物やプリン、薬をもってきてくれた。私はいつも通りにちょっぴりひねくれながらも、居心地よくて甘えて看病されてた。
これだけ私のことを想ってくれる人達は他にいない。残念ながら。
帰り際、歯みがきをし終わって、歯ブラシを置こうとした。だけど、これはここの歯ブラシではなく、自分で持ってきたものだった。3本並んだ歯ブラシと手に握った1本の歯ブラシ。