ファイナルファンタジックスーパーノーフラット

吉祥寺シアター。ここ初めてだけど今日は2列め。舞台は自由に使えそうだけど、今回は前後に空間を作ってたので前のめり度は少ない。かなり良かった昨年の「遭難、」に続く「劇団、本谷有希子」公演。
ひきこもりでオタクの青年トシロー。遊園地を経営しながら、自分の理想の萌えキャラクター「ユク」を溺愛した行動をとる。その遊園地に寝泊まりしている女が4人。元・自殺志願者の彼女らは遊園地の従業員縞子の指導のもと、「ユク」になりきっている。そのうちの一人、作家の琴音を探して編集者の夏越と詠子がやってくる…。
トシローは自分の理想を「ユク」に投影し、琴音らは自分の理想を「トシロー」に投影する。けれどそれは常に一方向の感情で、本人らは期待してても戻ってくるものは偽り。厳しい現実から逃れるために理想を作ったのに、理想が現実をがんじがらめに縛りつけて苦しめるという皮肉。目的がなくなって手段が目的化してしまう。
一方、縞子は一見トシローを想って純粋に尽くしているように見えるが、結局ラストで「ユクを溺愛しているキャラクター」に惹かれていたのだと知る。皆が求めていたのは自分に心地よい記号。詠子の書く小説も、琴音の小説を記号化して再生産しているだけでオリジナルは創造できない。
トシロー役、高橋一生は顔立ちは整ってるし、足は長いけど軽快にオタクを演じてる。縞子役、笠木泉はこの芝居で重要な役を十分こなしたと思う。セクシーさとズーズー弁の声が印象に残ったと思ったら、声の仕事もしてる人だった。詠子役、すほうれいこは脚本・演出的にも全体に目立ちきれなかった。琴音役の吉本菜穂子は前回同様の半ギレ気味の演技がよかったけど、後半につれて影が薄くなっちゃった。