THE BEE

三軒茶屋のシアタートラム。パブリックシアターは何度か来たけど、こっちは初めて。中央前から2列めのめちゃいい席。
NODA・MAP番外公演。野田秀樹＋男2人＋女1人という構成は「赤鬼」と同じ。あれもシンプルな舞台だったけど、今回も開演前には大きな模造紙が1枚敷かれているのみ。この紙は映像を投影するだけでなく、切って窓にしたり破って封筒にしたりと自由自在に使うのが、とても野田秀樹らしい。
前半はとにかくよく動く。野田秀樹を中心に、周りを秋山菜津子と近藤良平がとりかこみ、浅野和之が相手する。野田以外の3人は警官だったりテレビのカメラマンだったり、次々に役を変えていく。野田秀樹も大声をあげて汗だくになって演技、だけど決して息は切らさず。
オゴロの家に着いてからは、被害者から加害者に変わったイドが、冷静にためらうことなく一線を越えた行為を続けていく。途中、野田演出必須のスローモーションシーンがあったけど、あっという間の2時間だった。エンディングもだらだらせず、カタルシスなく、あっけなく終わってしまった。
普通に思えた人生が、偶然にも悪意のある存在との関わりを余儀なくされる。その時に周囲（メディア）は、同情心を煽る被害者を演じることを半ば強要する。そのことに対する皮肉と、復讐というプレゼントを復讐というプレゼントで返し続ける愚かさ。
他の3人の役者さんも演技上手いんだろうけど、この舞台はほとんど野田秀樹の独り舞台に思える。ストーリーも結局、独り相撲なんだよね。というわけで、ロンドン版が気になる。