トニー滝谷

hifie2005-02-06

テアトル新宿にて。ここの映画館は初めてだった。場所がうる覚えで、新宿文化シネマに行ってしまったのでコンビニの地図で確認。普通に靖国通り沿いだったのね。意識的に後ろめの席に座る。ちょっと距離感を置いてじっくり観たい映画だと思ったから。
電車の中と映画館に着いてからの時間で原作をもう1回読んでみました。でもそのせいで、映画を観ている最中も、私の頭の中で原作と比較してたり、ごっちゃになってて、邪魔をしていたような気がします。イッセー尾形の演技や、ナレーションの後を受けて俳優がしゃべる部分、原作にはないエンディング部分などに「えっ、そうくるの!?」「うーん」と正直、違和感のようなものを感じてました。
けれどもけれども、全体を通すトーンがすっごく好きな映画です。坂本龍一の音楽は必要十分でこの映画を作ってます。耳から離れない。素朴に訥訥と話すナレーションと相俟って透明感をだしてます。透明感は背景にも現れていて、いつも外の景色が映ってる。ガラス張りの建物なのかと思ってたけど、メイキング観たらそうじゃなくて外のセットなのね。この背景とか左から右に流れる画面とか、当たり前だけどそうした映像処理が上手いと思う。カメラ自身も二人の斜め後ろから撮る絵とか、いくつかうなってしまうような美しい撮り方をしてます。
そして宮沢りえがすごく良い演技しています。ちょっととぎれとぎれにアクセントをつけてしゃべるところが好きです。それに美人さんですね。美人さん過ぎて外見に目がいってしまい、A子とB子がどっちも宮沢りえになってしまったのが玉にキズですが。いっそ体形は同じだけど、全然顔つきが異なる女優が演じてみたらどうだろう。そりゃあ、トニー滝谷は亡くなった妻と似た女性を選ぶだろうけど、でも実際は違う人である。妻でない人が妻の服を着る。服の持ち主でない人がその服を着る。そうしたほうが涙のイメージがちょっと変わってくるんじゃないかな。
私が原作を読んだときに感じた「孤独感」はちょっと薄まってるかな。特に結婚前がもっともっと欲しかったと思う。ただ、この映画自体が原作以上に、抑えて抑えて、淡々と作られているので、原作をしっかり読んでしまった人に物足りなさげに感じてしまうのかもしれない。普通は小説、しかも短編を映画化するとなると、話を肉付けして膨らませるものかと思うけど、この映画は原作以上に洗練されていてすっきりしている。