リチャード・ニクソン暗殺を企てた男

hifie2005-07-02

新宿テアトルタイムズスクエア。だいぶ空いてた。ここでは一番後ろに座る。
ショーン・ペンが結婚にも仕事にも失敗し、飛行機をハイジャックしホワイトハウスに突っ込むことを計画していくまでのお話。このサム・ビックという男は、キャデラックを乗り回す男でなければ、住む場所に困るホームレスでもない。いわば中流。結婚し、子供も3人作り、それなりに仕事もしていたのだろう。ただし、それほど成功していた、幸福だったようすでもない。
そんな「中空飛行」をしていた彼が、いつのまにか「低空飛行」をしていく。それはいらだつほどの純真さ。実際、劇中では彼は周到にして、やや好意的に描かれている。しかし、わたしには、上司や融資面接官には嘘をつき、一方で妻や友人には自分の意見を執拗におしつける、矛盾を感じてしまい、それが少々のいらだちを覚えた。そういう意味とまた現在のわたし自身の境遇からも、彼に十分の共感は得られない。また、彼の孤独さはわたしの孤独さと違う気がした。失っていった孤独さと、はじめから何もない孤独さなのかな。彼の孤独自体は映画の中でうまく描かれてたし、わたしの孤独は誰かにわかって欲しいわけじゃないけど。
だけどその一方で、自分のなかに密かに横たわる、太宰治の作品のような、破滅欲。表面的にうまくいっていても、いつかボロがでるんじゃないか、夜道に襲われるんじゃないか、といった破滅欲。それがサムの堕ちっぷりを少し羨望の目で見ていた。空港の搭乗ゲートや機内での振る舞いを家で練習するようすがたまらなく孤独で哀しい。
やっぱり、新宿とか渋谷とかは孤独っていうか、自分の居場所じゃない気がするね。それがそれで、逆にアウェー感がして、いいんだけど。自分が中心にいない感じ。わたしはそういう中で生きるのが慣れっこで、それをむしろ好んでいたりもする。その対局にいたのが、このサム・ビックという人間なんだね。