大事なものは空に

今日久しぶりに友達と会いました。

たしか、あれは小学校5年生の林間学校から帰ってきた夕食だったと思います。
黙っていたわたしの目から突然大粒の涙が落ちました。
母親は心配し、旅行で何か嫌なことがあったのかと尋ねました。
わたしはなんでもないと答えました。しかし、涙は流れました。

あの時間が戻ってこないことが悲しかったのです。
さっきまでみんなと一緒にいた、あの時間。昨日の夕食はみんなと一緒に食べていた。
その旅行で何か特別楽しい思い出があったわけではないのです。
いつもどおりちょっとシャイに、あんまり目立たないポジションで過ごしていたと思います。
クラスメイトだって皆と皆、そんなに仲が良かったわけでもない。
でも、「その時間」「その空間」がかけがえのないこと、もう二度とやってこないことに、気がついたんです。家族の顔を見ながら夕食をたべているときに。

あれから10年。ひとりぐらしの部屋で私はまた涙を流しました。
なんにもかわってないや。

さびしくて、さびしくて、声を出して本を読みました。
美しいことばのシャワーを浴びたかったから。