東京都写真美術館

hifie2007-10-08

2階は鈴木理策「熊野、雪、桜」展。とっても素晴らしい。
入ると目に入ってくるのは、空を白く飛ばした背景に、葉の緑色が映える樹木の写真。さらに鮮やかな森や小さな滝。いつかどこかで見たような、懐かしいでも貴重な吉野の自然。ピントのあたる範囲を狭めて、露出にメリハリをつけた作品は立体的な存在感がある。
細い廊下に入ると、夜中に行われる火祭りの写真。闇夜に炎で照らされる人々の顔。そして浮かぶ火の粉の写真。その後ろを振り向くと、そこには同じように闇に舞う小さな白い粉。隣の写真をみていくと、だんだん大きくなる雪の塊。真っ暗な中に白い雪が落ちていく姿に感動する。
その通路の正面には、雪じゅうたんに落ちていく白雪。そして右手の部屋に入るとそこは一面白世界。壁も床も白い光沢で光って眩しい。そこに飾られる雪山の写真。一枚め二枚めには、かろうじて木の幹や枝が写っているが、その隣には雪しかない写真。真っ白だけど、雪の影で薄く波打ってる。そして覗き込んでる自分や他の来場者が映り込んでる。まるで自分たちが雪山を歩いているよう。
その対面には、木の枝に積もった白雪をアップで写した写真。それが何枚も続いたかと思うと、いつのまにか桜の白い花びらのアップに変わってる。春の青い空が隙間からちょっとだけ顔をみせる。最後の写真では、はっきりと見事な桜の写真。
何を言いたいかというと、写真ひとつひとつだけじゃなくて、その並べる順番や照明や壁面も含めて「写真のための空間」に感動したってこと。写真集じゃ絶対得られない体験。これがあるから、この美術館に通うわけさ。にしても、今回はすごい。