エクスペリメント

ヒューマントラストシネマ渋谷。学者の実験のためアルバイトを囚人と看守にわけて模擬的な監獄をつくり、それぞれの"役"の行動や心理状態を観察するという悪趣味な映画。実在の話であり、既に一度es[エス]として映画化されてるが、それは未見。
囚人役を「戦場のピアニスト」のエイドリアン・ブロディが、看守役「ラストキング・オブ・スコットランド」のフォレスト・ウィテカーが演じる。2人ともアカデミー俳優でがっぷりバトルする。
ということで前評判は見てないけど期待していたのだが、だが、出来はいまいちだった。。
各キャラクターやエピソードがなんか単発でいまいちつながらないというか。ヒロイン役が登場するけどストーリーに関係ないような感じだし、囚人仲間も主人公と糖尿病作家以外はあまり目立たない。最初に看守につっかかるじいさんとか、刑務所の過ごし方を悟っている冷静な奴がいるけど、生かしきれていない。囚人も看守も目的を共有するはずなのに、「始めから」全然協力し合うことがない。最終的に衝突して爆発するのは目に見えているんだけれども、その前の「タメ」がないから単純に単調で終わってる。
どっかで指摘されてたけど、看守役の描写も不十分に感じる。「優しそう」という印象があるからこそ、サディスティックな行為のギャップの怖さがあるのに、前振りがちょっと弱い。(日本人だからか)クリスチャンっていうだけじゃこの人物の性格がよくわからないし、結構早い時期にSになってしまう。もうちょっと、いかにもな感じの若者にひどい仕打ちを任せた上で、なにかをきっかけに急に残虐になる、ってほうがいい。これじゃ始めからこんなひとだったのねって話になる。
また、規約違反があればランプが光るという設定だが、なんかひと工夫欲しかった。スリーアウト方式にするとか、違反前に警告で光るようにするとか。そうすれば、ただただお互いにヒートアップするばかりでなく、一回冷静になることが出来たのではないか。
まあそんなわけで、珍しく映画をみてケチをつけたくなるようなイマイチな作品だった。逆に言うと、それだけ自分の中に映画の在り方や見方ができているってことで、それを自覚できたのが良かった。