死にぞこないの青

乙一著。「コールドゲーム」に続いていじめの話。いずれも文庫本なので執筆されたのは4年も5年も前。だけど今読んでタイムリー。優れた作家の作品は廃れないとも言えるし、「いじめ」はいつになってもなくならないとも言える。
コールドゲーム」はいじめていた側からの視点で、こちらはいじめられる側の視点の話。この心理描写がうまい。ちょっとしたことから先生から不信感を抱かれ、クラスの叱られ役になってしまう。「先生は、大人は正しいはず」という気持ちから、自分の存在に対する劣悪な不公平さに苦しむようになり、「理科室でのこと」を経て自我を地に落とされ無感情になってしまうまで、実に繊細に詳細に書かれてる。このびくびくした感じ。そしてクラスメイトの全く悪気のない行動。
こんなにひどい話なのに、何てことない人生を送ってきた私がこのように共感してしまうことがなにより恐ろしい。

死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)

死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)